クッキングハウスからこんにちは No.223
(記事の一部抜粋)

2025年7月29日発行


総会記念コンサート
心の居場所 ここにいてもいいのですね

ゲストの山本忠生さんは京都在住の86歳になるシンガーソングライター。全国どこへでもアコーディオンを持って出かけ、歌ってこられた。あたたかい人柄で、明るい冗談で人の気持ちを楽にしてくれる。クッキングハウスのうたのCD録音の時は、いつも山本忠生さんがいてくれた。20周年記念に八丈島でソングブック「へいなよ」の録音。25周年記念「心の居場所」CDの録音の時は、コチコチに緊張しているメンバーたちに、やさしく声をかけて下さり、気持ちをほぐしてくれた。
「不思議なレストラン」の作曲者。ワルツのメロディでやさしく歌う。私たちは、このうたを「私たちのうた」だと感じて、紹介会やメンタルヘルスの学習会、お客様を歓迎する時、イベントの時など、どんな時でも歌ってきた。涙して聴いて下さる方が必ずおられる、うた。
38年間、様々な事情を抱えてやってきた人たちを「そのままのあなたで大好きです」と仲間として受け入れてきた心の居場所。これからも「ここにいても いいのですね」と安心できる居場所であり続けたい。増田康記さんのギターとメンバーの青木紀子さんのピアノ伴奏も入り、年を重ねた分だけ更にやさしく明るく自然体で歌って下さった。多少のボケも間違いも参加者の笑いで受け止めてくれた、心温まるコンサートだった。山本忠生さん、いくつになってもうたの旅を楽しく続けて下さいますように。          (松浦幸子)
メンタルヘルス市民講座 初夏の巻
全6回 参加修了を目指して

今回は今までの中で一番に参加者が多く、苦労を抱えている当事者、子育てを頑張っている家族、親子連れなど、皆さんが必死の思いでやって来て下さり、学んでいます。精神疾患の理解とサポートを講義した後は、コミュニケーションのワークです。安心言葉のワーク、ほめ言葉のシャワーでは、心をふわっとほぐしてくれる優しい言葉かけのリレーを聴いていると、つらさを忘れて幸せな気持ちに満たされてきます。
メンバーたちも自分の病気の経験を自然に語ってくれます。新しいメンバーだけでなく古くからのメンバーも「今まで続けて参加できなかったけど、今回こそは6回続けて修了証をゲットします」と意欲的。灯台の灯のように、変わらずメンタルヘルスの灯りをともし続けてきて良かったと思います。                                   (松浦幸子)
「病気について学べることは、私にとって「自分を知ること」に直結していると感じました。回復に向けて学べること、本当に嬉しいです。松浦さんをはじめ、みんなで作るあたたかい空気、本当にありがとうございました。オープンダイアローグ、SST、ほめ言葉、地元に帰ってからも使えるようになりたい。」  「まさにオープンダイアローグのような場での学び、本当に素敵な場所だとあらためて実感しました。家の中でたき火を囲んで、それぞれの違いよりも共通の何か、尊さのようなものが浮かんでくるような。こんな会は珍しいです!私たちはラッキーだ。塩キャラメルのシフォンケーキも極上のお味でした。」
 「このような場があることに感動しました。今回も皆さんのお話、とても私には必要なものだったと思える、素晴らしい内容でした。瞑想は初めてで、上手くできないことがわかりました。皆さん大変だった自分を抱えながら、とても穏やかで互いに尊重する姿が素晴らしいです。」  「今日のテーマに沿った経験を、それぞれ当事者のメンバーの方々から、ご自身の言葉で聴かせていただき、ありがとうございました。お三方の経験なさったことのお話の中には、私も含めて人が生きている中で起こりうるつらさや大変さがあり、そこには境界線は無いように感じました。」
SST普及協会30周年記念事業本大会
~SSTで温かい社会を創ろう!

1995年2月に発足したSST普及協会が30周年を迎えた。クッキングハウスの歴史の中に、前田ケイ先生との出会いがあり、いつもSSTがあったことを辿りながら感慨深い。1987年にクッキングハウスを開いた時、一人一人の可能性を信じ、希望に繋げたこと、その人の良いところをほめると自己肯定感が増し、自信がつき、リカバリーにつながること。そのことを理論的に証明してくれたのがSSTだったから、メンバーと共にSSTの時間を大切に積み重ねてきた。前田ケイ先生が応援に入って下さり、家族SSTが始まり、家族が学び、当事者と良い関係になるためのコミュニケーションを練習できるようになった。更に「SSTは誰にでも役に立つから、スペシャルSSTをやりましょう」と当事者・家族・市民・専門職・学生と開かれたSSTになった。今では「誰でもSSTとして」各地の市民たちのSSTワークにも出かけ、SSTの魅力を伝えられるようになった。
30周年の記念大会では、当事者から見たSSTの良いところ、お役立ちどころ、「SSTのここが好き!」というテーマで当事者座談会も組まれた。まさに当事者の時代へと歴史は進歩し、成長してきたのだと喜びがあふれた。浦河べてるの家、クッキングハウス、ひだクリニック、NPO法人家族SST横浜交流会の当事者の方々が登壇。クッキングハウスからは内藤浩子さんがSSTで課題を出して仲間の応援をもらって練習し、良いところをみつけてほめてもらったから自信がついて15年間、再発せずにここまできたこと、家族や親戚の人間関係が良くなったことを明るく語ってくれた。
記念シンポジウム「広がるSSTの可能性・生きる力と支える力を育てるSST」では、北海道の浦河べてるの家・向谷地生良さんのオンラインでのお話に深い感銘を受けた。「自分を助け、組織を変える―SSTがもたらす人と現場の変革」。1978年、ソーシャルワーカーになった時の完全に閉鎖的で服従の精神科医療の壁を破ろうと自助活動の育成に取り組んだ「SST前夜」の話。SSTとの出会いが当事者主導への治療構造へと変えていく起爆剤になったこと。自分を助けるツールとしてSSTに寄せる期待と信頼が揺るぎないものになったこと。そして当事者研究へと、SSTの可能性を「人」と「組織」の変革として力強く語ってくれたのです。同時代を悪戦苦闘してきた私の中にも再びパワーがあふれてきました。
SSTに尽力された前田ケイ先生には特別功労賞が送られました。心から喜びと感謝を申し上げます。そして私も功労賞をいただきました。SSTを、これからも明るく楽しく広げて伝えていき、心豊かな社会になるためにお役に立ちたいと思います。  (松浦幸子)
SSTの普及に貢献!松浦幸子さん功労者として表彰
1995年、前田ケイ先生と松浦さんが一緒に始められた「スペシャルSST」は、全国でも初めてのことでした。メンバーもスタッフも、地域に暮らす当事者のかた、専門職のかた、学生さんから一般市民まで、誰でも参加できるSSTは、今では「誰でもSST」として全国に広がりましたが、当時は画期的なことでした。クッキングハウスでも、とても人気のプログラムです。スタッフも、できるだけ参加しようと月に1回の機会を逃さないよう仕事を調整します。松浦さんがリーダーのSSTが楽しく深く、そして学びになるのは、その引き出しの多さにあります。サイコドラマの要素も取り入れ、時にはユーモアたっぷりに、時には胸が熱くなる感動の場面もあり。そして、練習したことで、前向きな考えや行動に自分自身が変わっていけるところです。今回、松浦さんが功労者として表彰され、「本当に功労者にふさわしい!」と、私まで会場で胸を張りたい思いでした。         (田村陽子)
一緒に創造していくSSTに
大会に参加し、「当事者の時代が来ているのだな」と、うれしい気持ちになりました。当事者の座談会では、メンバーの内藤さんが、ウォーミングアップにクッキングハウスの「ほどほど音頭」を歌って場を和ませてくれて、「SSTは生活していく上で、なくてはならないものです」と話してくれました。家族の蟻須賀さんは、それまで子どもを叱り飛ばしてきたのが、SSTで「人の話を聞く」「嬉しい気持ちを伝える」「困ったことを伝える」ことができるようになり、自分が変わることができたこと。ピアスタッフの高橋さんは、SSTがあって、ピアスタッフが継続できていることを話してくれました。又、「SSTのもっとよくしてほしいところ」について、「問題をなくすためにSSTをやるのではなく、『大変だったね』と思いあえるSSTであれば」という山根さんのお話。又、「スキル学習をすると、しんどくなることがあります」と語り、「SSTを、本人の希望に沿ったものにするためには」という村松さんの問題提起。さらに「支援者は、成長モデルで考えてしまう」という清水さんの問いかけには、はっとさせられました。
また、実行委員で医学博士の安西信雄先生が、教える側、教えられる側ではなく、一緒に考えていくこと、共同創造型SST(co-SST)をめざしていこう、という言葉が心強く、印象に残りました。
現代社会において孤立した人たちに寄り添い、だれもが自分らしく生きることができる社会を目指していることに、SSTが社会をより人間らしく、ゆたかにしていく力を感じ、これからも皆でSSTを深め、広めていきたいと思いました。               (井出歩)
いい本が出ました
「基本から学ぶSST 改訂新版」(前田ケイ・著/星和出版)
93歳になられた前田ケイ先生。お元気で執筆活動も続けておられます。先生の心のあたたかさと、情熱が伝わってくる本です。クッキングハウスでの家族SSTの様子を、参加されているご家族やメンバーが一言感想で書いてくれました。素直な思いがそのまま伝わってきます。(3章の家族SST)をぜひお読みください。             (松浦幸子)
前田ケイ先生からのお手紙
松浦様 あなたの御協力のおかげで新しい本が意義深くなりました。名古屋の方たちの感想、なかでもお父さんの立場での感想は特に胸に響きましたので、読んでみて下さいませ。一人でも多くの方に読んで頂きたいと願っておりますので、よろしくお願いします。私はまた、保護司のためのSSTの本の改訂に取りかかり、パソコンに向かう毎日です。もう東京に行くのは無理になりましたが、自宅で元気で楽しく暮らしています。皆様によろしくお伝え下さいませ。お元気でね。神様の平安がクッキングハウスに満ちていますよう祈っています。                                                 (前田ケイ)
私のリカバリーの物語(第十八回)
もっと自分にやさしくしよう
今回は私のオススメ本を紹介します。『自分にやさしくする生き方』(伊藤絵美・著/ちくまプリマー新書)です。今、いろんなところで“自分にやさしくしよう”と言われるようになりました。「よし、私も自分にやさしくしてみよう!」と思っても、実際に「どうすれば自分にやさしくできるの?」とわからなくなってしまいます。著者の伊藤絵美さんは公認心理師・臨床心理士・精神保健福祉士の資格を持ち、30年以上カウンセリングをされた方だそうです。困り事を抱えて相談に来る方たちに共通する特徴が「自分に厳しい」ということだと伊藤さんは気づきました。「自分はダメだ」「自分を信じられない」「自分は何をやっても上手くいかない」「自分には価値がない」とまるで口癖のように聞かされ、カウンセリングで「自分にやさしくする方法」の練習を始めたそうです。本では段階を踏んで、一つ一つ学んでいけるので、すぐその場で使って練習できます。何度も練習しているうちに「自分にやさしくする」スキル(技術)が身につき、気づいたら習慣になっていくそうです。たくさんの人が社会からの「自分に厳しくあれ」というメッセージを受けて、生きづらさを感じている時代。もう少し楽な気持ちで生きてもいいのです。      (前澤真貴子)
ドキュメンタリー映画「ゆめパの時間」上映会
神奈川県川崎市にある子どもたちの居場所「川崎市子ども夢パーク」。約1万㎡の広大な子どもたちの居場所がある、その一角にある「えん」は学校に行っていない子どもたちが安心して自分のありのままに、のびのびと過ごしている。遊ぶこと、学ぶこと、休息すること、一緒にご飯を食べること、人と共にあること、そして自分らしく輝くこと。すべての時間を子どもたちに保障する場。何をしてもいい、何もしなくてもいい、いっぱい試してみて考えること。これらすべてが大切な時間。遊びがもっている力は、人間として生きていく力を育むことだ。
この映画は各国でも上映され、NHKドキュメント72時間でも年間ベスト1になり、7回も再放送となる位、共感の輪が広がったという。夢パーク創設者の西野博之さんが上映後、講演をしてくれた。これ以上、子どもたちを犠牲にしてはいけないと、今では自治体や国レベルでの教育改革について提言者になった。ものすごい忙しさなのに昔から、ちっとも変わらない。やさしくて包容力があり、フレンドリーである。調布での講演が終わったらすぐに児童精神科学会の発表があり、走らなければならないというスケジュール。おにぎりの差し入れをする私に「やあ、松浦さん。よく来てくれたねえ」と満面の笑顔である。
35万人もの不登校。増え続けている子どもの自死(2024年・529人)。いじめも73万2568件。子どもたちは自己肯定感が低いままに悩んでいる。大人の不安が子どもを追いつめてしまう。大人が子どもに完璧を求めすぎてしまう。だから子育ての親に安心のサポートを届ける必要がある。学校そのものを問い直す時代になっている。西野さんは全力で訴え続けている。どうか体を大切にね、と祈らずにはいられない。     (松浦幸子)
「学校に行かない子どもが見ている世界」(KADOKAWA)
「せかいにひとつ あなたのうた こどものけんりをたからかに」(子どもの未来社)



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